高齢者のドライバーをどうするか? 我が家の場合

アメリカと日本の違い

2019年4月末、東京の池袋の交差点で、87歳の男性が運手していた車が事故を起こし、母娘2人が死亡、男女10人が重軽傷を負った事件が発生。高齢化社会がもたらす社会問題に、様々な意見がテレビやマスコミを通して報道されました。ある日突然、妻娘を失った男性の会見に、心を痛めた方も多かったと思います。

私の実家にも、運転免許証を自主返納した80代の祖母がいます。見た目も若く、80代の割にはかなり元気な祖母で、毎日畑仕事をしています。しかし、70歳を超えた辺りから、危なっかしい運転を近所の人から指摘されたりすることが多くなり、祖母の運転を辞めさせようと、家族で何度も話し合いました。が、自主返納を決めさせるまでに、思った以上の時間を要しました。

私:「おばあちゃん、もう運転は辞めたほうがいいと思う。事故を起こしてからじゃ遅いし、おばあちゃんの命にも係わる問題だから、辞めたほうがいいと思う。」

祖母:「大丈夫。私より5歳年上のXXさんも、まだ運転してるし。この前免許の更新に行ったら、90歳の人もいたのよ。私なんてまだまだよ~。」

何度話し合っても、こんな調子でした。実家のある場所は、一番近くのコンビニが車で10分のところにあり、周りはほぼ田んぼと畑。車がないと生活ができません。祖母から車を奪ってしまうと、「じゃ、誰が祖母の代わりに運転をするのか?」が問題になります。気が強い祖母は、近くに住んでいる私の叔母(祖母の娘)とも折り合いが悪く、ヘルプは期待できません。結局、祖母の負担は同居している母にいってしまうのが目に見えているので、普段アメリカに住んでて、母を助けられない私は複雑な気持ちになります。祖母の息子である私の父も、「俺は仕事で忙しいからな~」とどこか他人事。叔父も遠くに住んでいるので、日常のヘルプは期待できません。

そこで、私が調べたのが、実家の市がサポートする「運転免許証自主返納支援制度」。満70歳以上で、有効期限内の免許を自主返納すると、タクシー券が年間3万円X2年間交付される、というもの。また、市内を循環する小型バスの運行も始まっていました。運賃50円で、市内の病院、図書館、スーパー、温泉、役所など、お年寄りがよく行く場所のみを巡回している特別なバス。久しぶりに実家に帰ったら、市のゆるキャラが描かれた奇妙なミニバンを見かけましたが、それがまさにそのバスだったようです。

あと、祖母に一番効果的だったのが、お寺の住職の協力。祖母は数十年前から、毎日朝と夕方、車でお寺に通っています。そこにいらっしゃる住職に、母が相談に行ったところ、「私の方からも、少し話をしてみましょう。」と快く、引き受けて下さいました。そのお寺は、毎週、個人の悩みを交えた説法の時間があり、その時に「家内安全」をテーマに、運転免許の自主返納を促す説法を、ここ10年近く頻繁に取り上げているそうです。参加者の高齢化に伴い、以前は、毎朝行われていたお参りを中止し、夕方のお参りも週3日に変更されたそうです。信頼を寄せる住職から直接、自主返納のことを言われた祖母は、それ以降すんなり言うことを聞くようになったそうです。

悩んでいた母も、自分だけでなく、家族みんなで祖母をサポートするよう、家族で話し合う機会をセッティング。祖母と折り合いの悪かった叔母、知らん顔だった父、遠方に住んでいる叔父にも、交代で祖母のサポートをするように、と話をし、お互いが納得のいく結果を得られたようです。

社会学の世界では、地域の悪しき習慣をなくすために、行政はもちろん、その地域を治めるリーダーや、宗教の代表者の協力を借りて、人々の意識を変えるアプローチは効果的であると言われている事例は多いです。インターネットやSNSによる個人の意識の改善、車の自動運転を始めとするテクノロジーの進化に伴い、一日も早くこの高齢者のドライバーの問題が解決されることを期待します。

ちなみに、年齢による差別が法律で禁止されているアメリカでは、高齢者のドライバーに関する法律はかなり緩めです。私が住んでいる州のサイトには、「80歳以上は6年ごとに免許更新、79歳以下は8年ごとの更新を義務化。更新のテスト結果次第で、条件付きで(夜間の運転禁止、AT車のみ運転可等)免許を更新することもある。」と記載があるだけです。シニア(最少50歳以上の高齢者)を対象にした割引は、映画館や小売店など至ることにあるのですが、シニアのドライバーに特化した特典は見当たりません。日本の「もみじマーク」を夫Kに説明したら、年齢差別にあたる可能性もあるからアメリカじゃ有り得ないな、と一言。(ちなみに、ドライバー初心者マークはアメリカにも存在します。)

今年72歳になるアメリカ人の義母が、夏、娘きのこを連れてカナダ国内をドライブしたいと言っています。何と言って丁寧に断ろうかと、今から頭が痛いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました